生活費の分岐点

基本料金0円の電気、30A契約では使う量で逆転しなかった

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電気・ガス 公開 2026-09-28 データ取得 2026-09-05

基本料金0円が東京ガスと並ぶのは 2.41円/kWh 電源調達費調整額がこの水準のとき。月300kWh・30A。使う量では入れ替わらない

漫画でわかる全12コマ

この記事の計算を漫画にしました。コマは横に送って読めます。

説明漫画。30Aの東京ガスと基本料金0円は入れ替わらない。電源調達費が13か月の平均(2.04円)のとき
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漫画の中の数字の出典:東京ガス(30A)とネットでんきBの料金(本文でも同じ数字を使っています)

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この記事の根拠

  • 独自集計 基本料金0円のプランは、30A契約では月1kWhから1,000kWhまで東京ガス基本プランと入れ替わらず、月300kWhの差は111円である 東京ガス「基本プラン」の料金表(data/watch/tokyogas-tariff.json・取得日2026-09-05)と、ネット電力の電気需給約款および料金ページ(data/watch/net-denryoku.json・取得日2026-09-03)から、使用量ごとの月額を計算(scripts/watch/denki-crossover.mjs) / 2026-09-05取得
  • 独自集計 政府の電気・ガス料金支援の値引きは、東京ガスだけでなくネット電力も同じ単価で実施している(2026年9月使用分は低圧3.5円/kWh) ネット電力「電気・ガス料金負担軽減支援事業に伴う電気料金の値引きについて」(2026年6月30日)を実クローラのUAで取得 / 2026-09-17取得
  • 独自集計 電源調達費調整額の実績は13か月平均2.04円/kWh、最大6.68円/kWhで、加算側に上限がない SustainableEnergy社が毎月公表している電源調達費調整額の平均単価(2025年7月分〜2026年7月分) / 2026-09-03取得
  • 定点観測 政府の電気・ガス料金支援(低圧)は、取得日時点で2026年9月使用分が公表されている最後の支援月である 資源エネルギー庁「電気・ガス料金負担軽減支援事業」の公表単価を2023年1月使用分から集計 / 2026-09-02取得

データの取得方法と計算の方針

「基本料金0円」をうたう電力会社があります。基本料金が935円かかる会社と比べれば、その分だけ安く見えます。

ただし基本料金は使用量に関係なく一定で、単価の差は使うほど広がります。 どこかで入れ替わるはずだと考えて、使用量ごとに計算しました。30A契約では、入れ替わりませんでした。

料金表に載っていない単価が1つある

比較したのは、SustainableEnergy株式会社が「ネット電力」の名前で売っている「ネットでんきB」(東京電力エリア)です。約款で確認できた内容です。以下、会社を指すときは「ネット電力」と書きます。

項目 金額
基本料金 0円(別表第2表で全アンペア0円)
電力量料金 27.00円/kWh(段階制ではなくフラット)
容量拠出金相当額 1.20円/kWh(料金表の単価には含まれない)
電源調達費調整額 市場価格に連動。毎月変わる
初期費用・解約金 0円(中途解約金の定めは約款になし)

容量拠出金相当額は、料金表の27.00円とは別にかかる上乗せです。2026年度の単価は1.20円/kWhで、使う量や契約アンペアでは変わりません。この項目が何の費用にあたるかは、料金ページと約款では確認できませんでした。

電源調達費調整額は、卸電力市場(日本卸電力取引所)の東京エリアの価格に部分的に連動して、毎月決まる項目です。市場価格のうち、あらかじめ決められた基準価格を外れた分だけが乗ります。2024年1月分から、それまでの燃料費調整に代わって導入されました。

料金表の見出しは27.00円ですが、そこに含まれない1.20円が別にかかります。さらに電源調達費調整額が乗ります。この13か月(2025年7月分〜2026年7月分)の平均は2.04円/kWhでした。取得日(2026年9月3日)の時点で公表されていたのは2026年7月分までです。

合計すると 27.00 + 1.20 + 2.04 = 30.24円/kWh です。

比較相手は東京ガスの基本プラン(30A)です。

項目 金額
基本料金(30A) 935.22円
第1段階(120kWhまで) 29.70円/kWh
第2段階(120〜300kWh) 35.69円/kWh
第3段階(300kWh超) 39.50円/kWh
燃料費調整(政府支援なし) −5.80円/kWh

再エネ賦課金は両社共通なので、どちらからも除いています。

政府の支援は、両社に同じ額が入る

ここを取り違えると結論が反対になります。

政府の電気・ガス料金支援の値引きは、東京ガスだけの話ではありません。ネット電力も同じ支援事業の値引きを実施しています。 同社のお知らせ(2026年6月30日付)に、低圧の値引き単価が載っています。

使用分 低圧の値引き単価
2026年7月使用分 −3.5円/kWh
2026年8月使用分 −4.5円/kWh
2026年9月使用分 −3.5円/kWh

東京ガスの燃料費調整単価が2026年9月使用分で−9.30円/kWhなのは、支援なしの−5.80円にこの3.50円が入っているからです。同じ単価が両社から引かれるので、2社の差は支援の有無で動きません。

資源エネルギー庁の公表を確認した2026年9月2日の時点で、支援は2026年9月使用分までです(ネット電力側のお知らせを確認した9月17日の時点でも同じでした)。以下は、10月使用分から支援が無くなるものとして計算しています。 支援が続いても、両社に同じ単価が入るので2社の差は変わりません。

30A契約では入れ替わらなかった

0 30kWh 30kWh: -745円 -745円 50kWh 50kWh: -618円 -618円 70kWh 70kWh: -491円 -491円 95kWh 95kWh: -333円 -333円 120kWh 120kWh: -174円 -174円 200kWh 200kWh: -146円 -146円 300kWh 300kWh: -111円 -111円 400kWh 400kWh: -457円 -457円 500kWh 500kWh: -803円 -803円
月の使用量ごとの差額。0より右は「基本料金0円」のほうが高く、左は安い。東京ガス基本プラン30A(基本料金935.22円・3段階料金・燃料費調整-5.8円/kWh)と、基本料金0円・27.00円/kWhフラットのプラン(容量拠出金1.20円と電源調達費13か月平均2.04円を加算=30.24円)の比較。政府の電気・ガス料金支援は両社が同じ単価で値引きしているため、どちらからも外している。どの行も0より左で、符号は入れ替わらない。差がいちばん小さいのは300kWhの111円。

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月の使用量 東京ガス 基本料金0円 差 安いのは
50kWh 2,130円 1,512円 618円 基本料金0円
120kWh 3,803円 3,629円 174円 基本料金0円
200kWh 6,194円 6,048円 146円 基本料金0円
300kWh 9,183円 9,072円 111円 基本料金0円
400kWh 12,553円 12,096円 457円 基本料金0円
500kWh 15,923円 15,120円 803円 基本料金0円

1kWhから1,000kWhまで0.1kWh刻みで計算して、30A契約では安い側が逆転する点(入れ替わる点)はありませんでした。 いちばん差が縮むのは300kWhのときで、それでも111円あります。月300kWhの家庭なら、年に直すと111円×12か月=1,332円になります。

支援がある2026年9月使用分でも並べておきます。

月300kWh 東京ガス 基本料金0円 差
2026年9月使用分(支援あり) 8,133円 8,022円 111円
2026年10月使用分から(支援なし) 9,183円 9,072円 111円

支援が終わると、両社とも3.50円×300kWh=1,050円上がります。差は111円のまま動きません。

なぜ「使うほど不利」にならないのか

段階料金に燃料費調整を入れた、1kWhあたりの実質単価で見ると分かります。

1kWhあたり
基本料金0円(フラット) 30.24円
東京ガス 第1段階(120kWhまで) 23.90円
東京ガス 第2段階(120〜300kWh) 29.89円
東京ガス 第3段階(300kWh超) 33.70円

東京ガスの第1段階は23.90円で、基本料金0円の側より6.34円安くなっています。ここで基本料金935.22円ぶんの貯金が削られていきます。ところが120kWhまでに削れるのは 6.34円×120kWh=760.8円 で、935.22円には届きません。

第2段階に入ると差は1kWhあたり0.35円まで縮み、300kWhに着いた時点で残りが111円です。そして300kWhを超えると東京ガスの単価が33.70円になり、今度は基本料金0円の側が1kWhごとに差を広げていきます。

「基本料金が0円だから使うほど不利」という形にはなっていません。 差が最も縮むのは300kWhの一点で、そこを過ぎると再び開きます。

契約アンペアで入れ替わる場合もある

東京ガス側の基本料金は契約アンペアで決まるので、貯金の額が変わります。

契約アンペア 東京ガスの基本料金 入れ替わる使用量
10A 311.74円 49.2kWh と 448kWh
20A 623.48円 98.4kWh と 357.9kWh
30A 935.22円 入れ替わらない
40A 1,246.96円 入れ替わらない

10Aと20Aでは入れ替わる点が2つあります。使用量が少ない月と多い月は基本料金0円が安く、その間だけ東京ガスが安いという形です。20A契約なら、98.4kWhから357.9kWhの手前までが東京ガスの範囲になります。

30Aと40Aでは、1kWhから1,000kWhまでのどこにも入れ替わりはありませんでした。

効いているのは市場の値段のほう

ここまでは電源調達費調整額を13か月平均の2.04円/kWhで置いています。この単価は毎月変わります。

2025-07 2025-07: 1.77円 1.77円 2025-08 2025-08: 1.69円 1.69円 2025-09 2025-09: 1.78円 1.78円 2025-10 2025-10: 0.73円 0.73円 2025-11 2025-11: 0.31円 0.31円 2025-12 2025-12: 0.06円 0.06円 2026-01 2026-01: 0.37円 0.37円 2026-02 2026-02: 0.44円 0.44円 2026-03 2026-03: 0.98円 0.98円 2026-04 2026-04: 6.68円 6.68円 2026-05 2026-05: 3.54円 3.54円 2026-06 2026-06: 5.04円 5.04円 2026-07 2026-07: 3.08円 3.08円
ネット電力の電源調達費調整額の実績(公式が毎月公表する平均単価)。月300kWh・30Aで東京ガス基本プランと並ぶ分岐点は2.41円/kWh。政府の電気・ガス料金支援は両社が同じ単価で値引きしているため、この分岐点は支援の有無で変わらない。色を変えた4か月はこれを超えている。うち直近の4か月は連続して超えている。

月300kWh・30Aで東京ガスと並ぶのは、電源調達費調整額が2.41円/kWhのときです。これ以下なら基本料金0円のほうが安く、これを超えると東京ガスのほうが安くなります。政府支援は両社に同じ単価で入るので、この分岐点も支援の有無で動きません。

公式が毎月公表している平均単価の実績を当てはめます。

月数
2.41円以下だった月(基本料金0円が安い) 9か月
2.41円を超えた月(東京ガスが安い) 4か月

13か月のうち9か月は下回っています。ただし超えた4か月は2026年4月・5月・6月・7月で、データのある直近4か月(2026年7月分まで)が連続しています。

この直近4か月の実績(3.08円〜6.68円)をそのまま当てはめると、月300kWh・30Aでは4か月とも東京ガスのほうが安い計算になります。この記事の「30A契約では使う量で逆転しなかった」という結論と矛盾はしません。入れ替わらないのは使用量の軸で、入れ替わるのは市場の値段の軸です。

いちばん開いたのは2026年4月です。この月の6.68円で月300kWhを計算すると10,464円になり、東京ガスより1,281円高くなります。

13か月平均の2.04円は、2025年10月から2026年3月までの低い月(0.06円〜0.98円)に引っ張られた数字です。分かれ目は使用量ではなく、契約した後に毎月決まるこの単価のほうにあります。

上限が無いのは両社とも同じ

電源調達費調整額は、加算側に上限がありません。 減算側だけ下限が決まっていて、最大の割引は4.00円/kWh(税抜)です。上がるときは青天井、下がるときは頭打ちという形です。

ただし、これは1社だけの話ではありません。東京ガスの公式ページにも書かれています。

燃料費調整の上限の設定はありません。

東京ガスの基本プランにも上限はありません。 上限があるのは大手電力の規制料金(従量電灯Bなど)です。規制料金から離れた時点で上限は無くなっていると考えたほうが、実態に合います。

なお、ネット電力の説明にも「30分毎の調達単価及びお客様の30分毎の使用量によって異なる」「全てのお客様が同じ単価になるものではございません」と明記されています。公表される平均単価は事後の値で、契約前に確定した単価はありません。

何を確認すればよいか

確認すること どこで分かるか
契約アンペア 検針票・ブレーカーの表示
自分の月の使用量 検針票・マイページの過去12か月
料金表に含まれない上乗せ 約款・重要事項説明書
調整額に上限があるか 約款の調整額の条項
調整額の過去の実績 会社が毎月公表している平均単価
解約金の有無 約款・特定商取引法に基づく表記

30A契約なら、確かめる先は使用量ではなく調整額の実績のほうになります。公表されている過去の平均単価を並べて、2つの見方をします。

知りたいこと 見るところ
この先どのくらい振れるか 過去12か月のうち2.41円を超えた月がいくつあるか
いま契約するとどちら側か 直近の数か月が2.41円のどちら側にあるか

この記事の限界

1社との比較です。 東京ガスの基本プラン(東京電力エリア)を相手にしています。他社と比べれば結論は変わります。基本料金0円をうたう別の会社は、料金の組み立て方そのものが違います(電気の割引7つを全部つけても、17か月中14か月は割高の計算)。

再エネ賦課金は両社から除いています。 国が決める一律の単価で、どこと契約しても同じためです。実際の請求額はこれを足した金額になります。

電源調達費の実績は13か月分です。 制度が2024年1月分から変わっており、それ以前の履歴は同じ条件で比べられません。

公表される平均単価は事後の値です。 実際の請求は30分ごとの調達単価と各家庭の30分ごとの使用量で決まるため、同じ月でも人によって単価が変わります。

政府支援の終了は、2026年9月使用分が取得日時点で公表されている最後の支援月であることに基づきます。 過去には終了後に再開したことが複数回あります(電気代の補助金はいつ終了?対象は9月使用分まで)。ただし支援は両社に同じ単価で入るため、再開しても2社の差は変わりません。

セット割は含めていません。 東京ガスにはガスとのセット割があり、ガスも同社で契約している場合はさらに下がります。

情報は記載の取得日時点のものです。料金と適用条件は変わります。契約前に約款で確認してください。


出典:ネット電力(SustainableEnergy株式会社)の電気需給約款・料金ページ・電源調達費調整額の公表値・「電気・ガス料金負担軽減支援事業に伴う電気料金の値引きについて」(2026年6月30日)、東京ガス「基本プラン」料金表・燃料費調整制度のページ、資源エネルギー庁「電気・ガス料金負担軽減支援事業」(いずれも記載の取得日に取得)。

よくある質問

基本料金0円の電力会社は本当に安いのですか?

今回計算した組み合わせでは、30A契約のどの使用量でも基本料金0円のほうが安くなりました。 1kWhから1,000kWhまで0.1kWh刻みで計算して、入れ替わる点はありませんでした。月300kWhでの差は111円(年1,332円)です。ただしこれは電源調達費調整額が公表13か月の平均2.04円/kWhだった場合です。この単価が2.41円/kWhを超えると東京ガスのほうが安くなります。実績では、データのある直近4か月(2026年4月分〜7月分)がいずれも2.41円を超えていました。

政府の電気・ガス料金支援がある月と、終わった後で結論は変わりますか?

変わりません。 ネット電力も政府の支援の値引きを実施しています(同社のお知らせ・2026年6月30日付)。2026年9月使用分は東京ガスと同じ低圧3.5円/kWhです。同じ単価が両社から引かれるので、2社の差は支援の有無で動きません。 月300kWhで計算すると、支援がある2026年9月使用分は8,133円と8,022円、支援が終わった10月使用分からは9,183円と9,072円で、差はどちらも111円です。

料金表に載っている単価だけで比べてはいけないのですか?

足りません。 今回の会社では料金表の単価が27.00円/kWhですが、これとは別に容量拠出金相当額1.20円/kWhがかかり、さらに市場価格に連動する電源調達費調整額が乗ります。この調整額の13か月平均は2.04円/kWhでした。合計すると実質30.24円/kWhになります。料金表の27.00円だけを見て比べると3.24円ずれます。

契約アンペアで結論は変わりますか?

変わります。 東京ガス側の基本料金が契約アンペアで決まるためです。10A契約では49.2kWhと448kWhの2か所で入れ替わり、その間は東京ガスが安くなります。20A契約では98.4kWhと357.9kWhの2か所です。30Aと40Aでは、1kWhから1,000kWhまで入れ替わりませんでした。

電源調達費調整額に上限はありますか?

加算側に上限はありません。 減算側だけ下限が決まっていて、最大の割引は4.00円/kWh(税抜)です。上がるときは青天井で、下がるときは頭打ちという形になっています。実績では13か月で平均2.04円、最も高い月が6.68円(2026年4月)、最も低い月が0.06円でした。なお上限が無いのは東京ガスも同じで、上限があるのは大手電力の規制料金(従量電灯Bなど)です。